抗精神病薬を服用中の患者は自動車運転ができないのだろうか?と疑問に思いました。
抗精神病薬の添付文書の多くが、自動車運転に従事しないことなどの記載があります。また抗精神病薬だけでなく、多くの薬で自動車運転に注意喚起の記載があります。
実際のところはどうなっているのでしょうか。
自動車運転に関する法律
まず前提として、自動車運転に関して規定しているのは「道路交通法」になります。
以前の道路交通法では、統合失調症やてんかんなどの患者は運転免許を取得できませんでした。
2002年の同改正により、現在は疾患がコントロールされ、安全に運転ができる状態であれば、運転が認められるようになりました。
しかし、てんかんや糖尿病の患者による自動車事故が相次ぎ、2013年にてんかんや統合失調症など一定の病気症状があり車の運転に支障を及ぼす可能性のある患者が、免許の取得や更新時に病状を虚偽申告した場合の罰則を新設することなどを盛り込んだ改正道交法が交付、施行されました。
あわせて、厚生労働省は2013年5月、「添付文書の使用上の注意に自動車運転等の禁止等の記載がある医薬品を処方又は調剤する際は、医師又は薬剤師からの患者に対する注意喚起の説明を徹底させること」との通知を発出しました。
2002年の同法改正で、てんかんなどの持病があっても、疾患がコントロールされ、安全に運転ができる状態であれば、運転することが可能となっています。ですので、優先すべきは、疾患の管理であり、そのために運転禁止薬の服用が必要になることもあります。
自動車運転禁止薬が処方された場合の薬局の対応
①投薬時のポイント
・伝え方が重要で、「服用中の運転が禁止されています」といったストレートな表現で伝えるのではなく、「この薬は眠くなりやすいので車の運転には十分注意してください」といったニュアンスで伝える方が、患者を混乱させることなく情報を伝えられるかと思われます。
・あらかじめ副作用を確認し、副作用が出る可能性を説明し、注意して運転するように伝えます。 また、症状が出たら薬剤師に相談するように伝えます。
・薬を服用し始めたときや増量時、体調が優れないときは、副作用が出やすいことを伝えます。 例えば、眠気の副作用のある薬を初めて飲む場合は、飲んですぐに運転するのは避けて、服用後に眠気が出るかを確認してから運転するよう説明しましょう。
・てんかんやパーキンソン病などの慢性疾患の薬が出された場合と、かぜや花粉症などの薬が出された場合では、取るべき対応は異なります。薬剤師は、疾患や治療薬、患者の状況を踏まえ、薬学的知見により患者への伝え方を判断していく必要となります。
②フォローアップ
薬剤師は、服用中は運転に支障を来す副作用が出ていないかを確認しなければなりません。副作用が出ていると判断したら、医師に情報提供し、必要によっては代替薬の提案も行います。
日経DIオンライン 特集2:運転禁止薬の服薬指導 運転禁止薬の服薬指導
運転禁止薬の服薬指導:DI Online (nikkeibp.co.jp)
自動車運転処方に関するガイドライン
自動車運転能力が低下した状態にある患者に、精神科医が主治医として関わるときの行動規範を示した「患者の自動車運転に関する精神科医のためのガイドライン」が日本精神神経学会より出ています。
運転禁止薬の対応については以下の記載となっています。
運転禁止薬物の処方についての現実的な対応と今後の方針
確かに、これらの薬物は、副作用として眠気などの明らかに運転に支障を来す症状を呈することがあり、注意が必要である。前述した道路交通法第 66 条の規定は遵守されるべきである。しかし、副作用の出現の仕方には個人差があり、処方を受けた者全員に運転を禁じなければならないほどの医学的根拠はない。実際にこれらの薬物の投与を受けている者が運転に従事しており、実態にもそぐわない。処方する医師としては、薬物の開始時、増量時などに、数日は運転を控え眠気等の様子をみながら運転を再開するよう指示する、その後も適宜必要に応じて注意を促す、といった対応が現実的であろう。
患者の自動車運転に関する精神科医のためのガイドライン 2014.6.25 版 20140625_guldeline.pdf (jspn.or.jp)
薬剤師としては、自動車運転禁止薬の具体的な副作用についての把握、投薬時の説明、副作用の有無の確認などが重要となってくるようです。